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夜の終わりを忘れたような図書館だった。高い天井には煤けた梁が走り、壁一面の書棚は、誰に読まれることもなく積み重なった物語を抱え込んでいる。窓の外では風が木立を鳴らしていたが、ここでは音さえ頁の隅に吸い取られるように静かだった。 私は、この場所に集められた三十体の存在を、順に紹介していくことにする。名を持つ者もいれば、古い噂のかたちで呼ばれてきた者もいる。けれど、ここではみな等しく一つずつ、番号を与えられて並ぶ。読者よ、どうか焦らずに耳を澄ませてほしい。彼らは恐ろしいだけの影ではなく、奇妙で、どこか哀しく、時に人に近い。 では、一体目から始めよう。 番号一、オーベロン。薄い金髪を持つ、小柄な妖精王である。肩にかかる緑の外套は、近くで見れば葉脈のような細かな模様が浮かび、歩くたびに微かな光をこぼす。彼は笑うときでさえ、相手の心をそっと試すような目をしている。けれどその眼差しは冷たいばかりではない。森の奥で迷う者に道を示し、季節の気配を指先で確かめるような、繊細な気配をまとっている。 オーベロンは大声で自分を誇らない。むしろ、囁くような声で世界の端を撫でる。誰かを惑わすこともあるが、それは悪意というより、遊びに近い。月の光が水面を震わせるときのように、彼の存在は静かなのに、見た者の記憶に深く残る。 この図書館に集う存在たちは、似ているようでいて、驚くほど違う。次に現れる者は、羽を持つかもしれないし、地面の下から来るかもしれない。だが今はまだ、入口に立ったばかりだ。まずは最初の名を、心に留めてほしい。オーベロン。三十の物語は、ここから始まる。
