chapalette Logo

図書館で語る三十の伝承者

小説ID: cmpl48kpn000d01p42wf71xrv

5 / 10

番号五、セラフィンは、これまでの四体のあいだに差し込まれるようにして現れた。彼は最初から中央に立つのではない。むしろ少し離れた書架の影に寄り添い、語り手である私の言葉が途切れぬよう、次の一歩を静かに整える役目を担っている。背は高く、羽根を思わせる白い装飾のついた外套をまとい、顔立ちは穏やかだが、目だけはよく周囲を見ていた。誰かが集中を失いそうになれば、さりげなく椅子の向きを直す。紹介の順を急ぎすぎれば、空気の流れが乱れるのを知っているのだ。 セラフィンは、何かを守るというより、場そのものをつなぐ。オーベロンが気配を揺らし、コルロが境を守り、ラドガーが日常を縫い、アズエルがずれを告げるなら、彼はそれらを無理なく並べ替える。たとえば本の背表紙が明るい色から暗い色へ移るとき、彼の存在があることで、読者の目は自然に次へ滑る。彼は案内役ではない。けれど案内が必要になる寸前の、ほんの小さな間を埋める者だった。 その働きは目立たない。だが、この図書館では目立たないことこそ、流れを支える力になる。ひとつ前の存在が強すぎれば、次の名は埋もれる。沈黙が長すぎれば、語りは止まる。セラフィンはその境目を嗅ぎ分け、ほんの少しだけ呼吸を整える。まるで手のひらで紙の角を押さえ、頁が風にめくれないようにしているみたいに。 彼が五体目であることにも意味がある。偶数でも奇数でもよかったはずの列に、あえて彼が置かれると、前の四体がただ並んでいたのではないとわかるからだ。オーベロンからアズエルまでを眺めているだけでは見えなかった、互いの距離や呼吸の速さが、セラフィンを挟むことで急に輪郭を持ちはじめる。紹介は一覧ではない。前の者が次の者へ、見えない橋を架けている。 セラフィンはそれを知っていて、誇らしげにもしない。ただ、次の名を呼ぶための静かな余白を残す。彼の役目が終わるとき、図書館の奥から、まだ言葉にならない気配が一つ、そっとこちらへ傾いた。