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狐火を継ぐために

小説ID: cmu5npfzf000201mzmbbo1okh

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「通信が死んでいます」 蒼介が端末を叩いた。外線表示は灰色のまま、非常回線も応答しない。梨乃は隔離扉の脇にある赤い把手の覆いを外し、奥の補助錠へ工具を差し込んだ。 「手動系統まで切られてる。電気錠じゃない、内部の爪が降りてる」 青い火は壁を走り、制御室の中央に一枚の映像を結んだ。昨夜の記録らしい。誰もいないはずの室内へ真白が入ってきて、端末に細長い記憶媒体を接続する。映像の真白は周囲を確かめ、素早く操作を始めた。 「これは違います」 真白の顔から血の気が引いた。 「更新用の試験はしていました。でも昨夜じゃない。記憶媒体も、こんなものは使っていません」 映像の中で、端末に表示された文字は更新計画。続いて保存領域の整理、旧式隔離機構の切り離しという項目が流れた。蒼介が真白を見た。梨乃は工具を握ったまま黙っている。 「秘密にしていた更新計画は、あるんですね」 冬至が尋ねると、真白は唇を噛んでからうなずいた。 「閉鎖後も炉だけを残す案が出ていました。けれど旧式の隔離系が生きたままでは危険です。蒼介と梨乃には、まだ仕様を固めてから話すつもりで」 「その計画書の作成時刻は、何時ですか」 冬至は壁の映像を指した。右下には零時十三分とある。一方、映像内の端末上部には零時二十分。さらに、真白が接続したはずの媒体には、施設で廃止された旧い認証印が刻まれていた。 「七分、ずれている」 暁の端末表示と同じだった。冬至は淡く揺れる狐火を見据える。 「これは監視映像ではありません。誰かの行動を写した記録に、別の記録が混じっている」 炉の出力が五十を越え、壁の火はもう一度尾を引いた。今度は映像の真白が、こちらを向いた。現実の真白とは違い、その目だけが青白く光っていた。

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