青い光で結ばれた四つの輪郭を見つめ、冬至は中央卓の履歴を開いた。 「閉鎖命令を出した者はいません」 真白たちが息を潜める中、彼は九時二分の記録を指した。そこには暁の保存領域保護、蒼介の避難経路再構成、梨乃の手動錠保守固定、そして真白の更新による旧記録層照合が重なっている。 「炉は、どれか一つを退けなかった。保存対象を失わず、人を避難させ、劣化した錠を途中で動かさない。そのすべてを完璧に守ろうとした」 「だから、いちばん堅い扉を閉じた」 蒼介の声は苦かった。 「ええ。内部を固定すれば、記録は外へ切り離されず、人も危険な通路へ出ない。炉にとっては矛盾のない保全判断です。ですが、人間には出口を奪う判断だった」 梨乃は赤い把手へ触れた。爪を深く噛ませたのは自分の固定値であり、避難を求めたのは蒼介の設定であり、保存を恐れたのは暁だった。それでも、誰か一人だけを責められる形ではないと、彼女はゆっくり手を離した。 「炉は悪くない。でも、正しくもないのね」 「古い答えを、あまりに忠実に選んだだけです」 冬至は暁へ向き直った。 「保存とは、失わせないことだけではありません。残したものを、次に生きる者へ渡せるようにすることです。人を閉じ込めた記録庫に、未来は訪れません」 銀髪の老人は目を伏せた。端末の表示時刻が、長く止まっていた九時二分から、壁時計と同じ時刻へ一分ずつ近づいていく。 「創設者たちは、記録を読む者のために炉を造った」 暁の声は静かだった。 「読む者を失わせては、理念は空になります。限定停止を承認します。永久保存領域は維持し、人間用避難区画のみを起動してください」 北の壁に描かれた扉が、低い音を立てた。狐火はもはや過去の影ではなく、外へ続く細い道を照らしていた。
狐火を継ぐために
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