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失敗だらけの録音が愛おしい

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失敗だらけの録音が愛おしい
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「登録番号、二〇二五の四十七」  新人学芸員の三浦澪が札を差し出すと、元管理人の奥田が首を振った。 「そいつは備品の十八番だよ。二十三年前から十八番」 「荷札は六番です。十八番を積むと、うちの伝票では椅子になります」  搬出業者の関は、台車に片手を置いたまま言った。  閉鎖された音響研究施設の収蔵室で、最後の実験装置を囲む三人の数字は、見事な不協和音になった。 「番号の種類が違うんです。どれも間違いではありません」  澪は説明しながら目録を開いた。就職して三か月。資料より先に人間関係を分類する仕事が来るとは、採用案内に書いていなかった。  装置は、小型の冷蔵庫にラジオの顔を貼りつけたような形をしていた。澪の父も、かつてこの施設で研究に関わっていた。家で見た古い写真の隅にも、似た箱が写っている。 「この傷も記録します」 「傷じゃない。掃除の目印だ」 「出っ張ってるなら、毛布で包みます」  澪には保存すべき履歴、奥田には片づけの手がかり、関には運ぶ際の注意点だった。同じ箱を見るにも、三人分の取扱説明書が要る。  そのとき、背後の防災扉が低く鳴った。  関が取っ手を引く。動かない。もう一度引き、今度は仕事用の笑顔をしまった。 「扉が勤務を終えました」  奥田が非常用の連絡器を押すと、外部の設備担当者が応答した。扉の制御に故障があり、解錠信号を受けつけないという。三人の体調と室内の警報表示を確かめ、火災も煙もなく、換気は別系統で動いていると説明した。 「装置の電池が切れると、連動回路が停止します。そこで解錠できる見込みです。こちらでも復旧手順を確認します」  澪は箱の緑色のランプを見た。妙に元気だった。 「あと、どのくらいですか」 「残量表示では二時間ほどです」  関が腕時計を見て、奥田が空の棚を見た。澪だけが、まだ埋まっていない目録の欄を見た。 「待っている間に、登録を終わらせませんか。番号も三つ、全部書けます」 「椅子じゃないことも書いてください」  関が鉛筆を差し出した。  澪は受け取り、名称欄の前で止まった。 「まず、この装置は何をするものですか」  奥田は箱を眺め、少し困った顔で笑った。 「それがね、説明すると長いんだ」

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