「答えを出す前に、下に敷く物は作れます」 関が台車から支持材を取り出した。装置の底にある出っ張りを避け、重さを平らな部分で受けるための板だった。 澪は目録を閉じずに、鉛筆をその上へ置いた。 「寸法を写す紙、ありますか」 「あります。荷物より紙のほうが多い日もあります」 差し出された当て紙を、装置の底板の縁に沿わせる。関が毛布越しに支えている間に、澪は端の位置と突起の幅を写した。紙を持ち上げ、向きを変えずに支持材へ重ねる。 定規を探すより先に、手が動いていた。 父と棚を直したときも、こうした。測った数字を覚えるな、紙に覚えてもらえ。父はそう言って、鉛筆を耳に挟んだまま探していた。 「ここを避ければ、底に無理がかかりませんね」 関が印を確かめ、用意してあった緩衝材を切り分けた。澪はそれを板に並べ、四隅へ順に指を当てた。高さの違う角が一つある。薄い一枚を足すと、板の揺れが消えた。 「気づくの、早いですね」 「角から確かめると、わかりやすいんです」 答えたあとで、その言い方まで父のものだと気づいた。 固定用のひもを通すときも、結び目は手前の、札に重ならない位置へ寄せた。解く人が指を入れられるよう、輪を少し残す。 「これなら搬入先で助かります。結び目を探すところから始める梱包は、だいたい宝探しの難易度です」 関がひもを軽く引き、緩まないことを確かめた。 「運ぶための丁寧さですね」 澪は結び目を見た。きれいにするためだけではなかった。次に触る誰かの手を、父はいつも先回りしていた。 奥田が板の横にしゃがんだ。 「修一さんも、紙、角、ひもの順だったな。数字を測り直す私に、紙なら忘れんぞと言ってね」 「鉛筆は忘れませんでしたか」 「よく探した。耳の上を」 二人の記憶が同じ場所で出会い、澪は笑った。 装置のランプはまだ光っていた。声を失うのが惜しいことに、変わりはない。けれど、父に教わった手順は、再生を待たずに出てきた。今も目の前で、装置を支える形になっている。 澪は目録へ、支持材の当て方と結び目の位置を書き足した。父の名を書く欄ではない。それでも、この一行に父と過ごした時間が少し入っている気がした。 鉛筆を置き、板の角をもう一度確かめた。指先には、録音媒体の外に残っていたものがあった。
失敗だらけの録音が愛おしい
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