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見えていた町の秘密

小説ID: cmru5t6zm000001qome5rh1js

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放課後、ぼくは転校生と並んで町を歩いた。いつもなら気にもしない道なのに、その日はやけに細く感じた。商店街へ向かう近道のはずなのに、途中で何度も角が現れて、知らない小道に入り込んだみたいに景色が揺れる。転校生は立ち止まって、古い郵便受けの列を見つめた。「ここ、昨日も通った?」と聞くので、ぼくはうなずきかけて、首をかしげた。通った気もするし、初めての気もしたからだ。郵便受けは五つ並んでいるのに、ひとつだけ色が少し違う。ぼくは前からそうだったと思ったが、転校生は「一個だけ新しいね」と言った。 商店街に入ると、八百屋のおじさんが店先で手を止めた。魚みたいに素早い人なのに、その日はぼくたちを見ると一瞬だけ固まった。まるで通るはずのない場所に、思いがけない石が落ちてきたみたいだった。向かいの文房具屋の女の人も、窓越しにこちらを見て、すぐ笑顔に戻る。その笑顔が、貼り直した絵のように見えて、ぼくは足を止めた。転校生は何も言わず、店のひさしを見上げたあと、ぼくの袖を軽く引いた。 「この町、道が変だね」 その一言で、ぼくの中の何かが静かに動いた。毎日歩いているはずなのに、同じ場所を通るたび、わずかに角度が違う。学校へ続く坂も、昨日より少し長い気がする。広場の時計台も、正午より早く鐘を鳴らしたように聞こえた。そんな細かなずれが、ひとつひとつは気のせいで済むのに、重なると胸の奥に重たい影を作る。 転校生はぼくの顔を見て、「みんな、ぼくたちが見ているものを知ってるみたいだ」と言った。ぼくは笑おうとしたが、うまくできなかった。通りすぎる子どもたちが、こちらを見ないふりをしている気がしたからだ。いや、見ないふりではない。見た瞬間に視線をそらす、その速さが、あまりに揃っている。 帰り道、ぼくはようやく気づいた。ぼくが知っているはずの町は、ぼくの目に合わせて並んでいるだけなのではないか。ぼくが見落としてきた何かを、道も店も人も、ずっと前から黙って囲っているのではないか。転校生の横顔は、まっすぐで、でも少しだけ悲しそうだった。ぼくはその顔を見ながら、自分だけが何かを見落としているのだと、はっきり思い始めていた。