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百年後の転校生は独りじゃない

小説ID: cmu1dduu0002k01mzp5v4k32m

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分校跡へ行くと言うと、結人は縁側で洗濯物を畳んでいた紬に呼び止められた。 「それ、撮らせて。村の謎を追う都会の高校生って企画、伸びそう」 紬は結人と同じ学年で、小さなカメラをいつも首から下げている。村の祭りから猫の昼寝まで配信し、登録者は村の人口より少し多いらしい。 「俺は都会の高校生じゃない。都会から来ただけだ」 「細かい。画面では同じようなもの」 結人は弁当箱をリュックにしまい、なるべく思慮深い横顔を作った。 「じゃあ、分校の謎を解く俺を格好よく撮って」 「了解。まず薪割りから」 映ったのは、源三に借りた鉈で薪を割ろうとして、薪ではなく台をこつんと叩く結人だった。次は沢で靴を滑らせ、最後は藪に引っかかった袖を引きちぎりそうになった。 「止めろ。これ、探索動画じゃなくて山に負ける人の記録だろ」 「大丈夫。題は『都会の高校生、自然に軽く注意される』」 「一切大丈夫じゃない」 紬は笑いながらも、沢の浅い場所や危ない根を教えてくれた。彼女の案内で二つ目の沢を越えると、木々の間に石垣が現れた。蔦に抱かれた古い分校跡だった。屋根は半分空へ返され、窓枠だけが、誰もいない教室を囲っている。 教室だった場所の壁に、薄い板が一枚残っていた。紬がカメラの明かりを向ける。 「見て。落書きじゃない?」 板には幾つもの名前が重なっていた。煤けた文字の下、かろうじて読める丸い字がある。 『澄江、町でもまけるな』 結人は息を止めた。澄江は祖母の名前だった。その横には、見覚えのない子供っぽい字で、『またかえってこい』と続いている。 「おばあちゃん、ここにいたんだ」 つぶやくと、紬は珍しくカメラを少し下げた。 「帰ってきたから、結人くんもここにいるんでしょ」 風が抜け、板が小さく鳴った。結人は弁当箱の重みを確かめた。祖母が帰そうとしたものは、ただの古い箱ではないのかもしれなかった。

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