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追憶端末、最初の挨拶

小説ID: cmu2stum1002z01mzfcb0mwpe

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翌朝、直人は配送車の待機時間に追憶共有端末の利用規約を開いた。画面には短時間の記憶体験、匿名化処理、利用者保護といった当たり障りのない文言が並ぶ。だが最下部の改定履歴だけは、やけに長かった。 六年前の条項に、記憶管理会社の旧事業名が残っていた。生活再建支援。失職や災害、家族関係の断絶などで生活基盤を失った契約者へ、必要に応じて記憶の保全、譲渡、人格履歴補助を提供する、とある。人格履歴とは、判断の傾向や対人応答の記録を調整用に参照する仕組みらしい。説明文は柔らかいのに、同意の撤回についてだけ文字が小さかった。 直人は自宅で古いメールの保存領域を探った。普段使う受信箱には何もない。削除済みを掘り返し、さらに端末が自動保管した圧縮記録を開くと、差出人不明の通知が一通だけ現れた。 件名は、面談日時のご案内。 本文の大半は文字化けしていたが、場所は記憶管理会社の旧支店、日時は五年前の十一月十八日、午後四時四十分と読めた。端末から戻るたびに重なった時刻だった。 その日の配送記録を照合すると、直人は午後三時まで通常どおり働いている。その後の二時間だけ、車両位置情報が空白だった。休憩扱いにも、早退にもなっていない。 直人は過去の予定表をめくった。十一月十八日の欄には、自分の筆跡らしい細い文字で、面談、とだけ記されている。何の面談なのか、書いた本人の感情さえ思い出せなかった。 棚の空いた跡が、暗い居間でこちらを見ていた。そこにあった写真を消したのは誰なのか。直人は画面に残る日時を写し取った。次に端末が一日を戻したなら、あの日まであと何回なのかを数えるために。

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