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北稜アーカイブ、時を継ぐ面

小説ID: cmu735ax1000h01mzy4k5sdmn

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翌朝九時まで、あと十五時間だった。 地下三層の壁面は、配置図にあるはずの扉を見せなかった。榊は古い非常灯の下で図を広げ、私の姉と自分の筆跡が重なる箇所を見比べた。 「壁の向こう、としか書いていない」 「違います」 私は余白の数字に気づいた。二四八一から二四八七の番号ではなく、火災当日の時刻が七つ、薄く並んでいる。最後だけが午前九時。明日の試運転と同じ時刻だった。 「理事は偶然、九時を選んだんじゃない」 榊は黙り、壁際の消火栓へ近づいた。火災で使用不能になったはずの箱には、七つの留め具がある。配置図の時刻順に押すと、最初の六つは鈍く沈み、最後の一つだけが冷たい音を返した。壁が内側へ割れ、湿った紙と煤の匂いが流れ出す。 狭い封印庫には、七つの箱と、古い携帯録音機が置かれていた。録音機の側面には、榊の名と十年前の日付が刻まれている。 榊は私の身体のまま、しばらくそれに触れられなかった。 再生すると、若い榊の声が、火の爆ぜる遠い音に混じった。 「火元は封印庫ではない。理事室が記録を伏せたのは、火災の責任を隠すためではない。ここにある資料を、評価前に外へ出したくない者がいる」 続いて、息を切らした声がした。 「面が反応した。交換は罰じゃない。資料を守る者を、失われる時代の外へ逃がす仕組みだ。俺は巻き込まれる。戻る条件は、二人が資料を独占せず、引き継ぐ先を決めることかもしれない」 録音はそこで途切れた。 榊は目を閉じた。「私は帰る方法を探していた。だが実際は、帰れない者として十年を渡っただけだ」 私は姉のノートを開いた。末尾に、これまで見落としていた一文がある。 閉じて守るだけなら、資料はもう一度燃える。読める形にして、多くの手へ渡せ。 七箱は秘蔵品ではない。公開に耐えるよう整理し、価値を証明すべき記録だった。私は真壁と西田へ、配置図、録音、箱の写真を予約送信した。試運転の時刻に自動送信されるよう設定する。 「私は装置を止めます」 「危険だ」 「榊さんは理事の閉鎖計画を調べて。火災の記録と、廃棄を前倒しした根拠を」 榊は頷き、七箱の前で録音機を拾い上げた。 「今度は、過去に隠すためではない。未来に残すために使おう」 壁の外で、廃棄装置の起動確認を告げる予告音が鳴った。

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