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卒業式に席は足りるか

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朝の光が講堂へ流れ込むと、湊は作業着の袖についた埃を払ってから、四人の前へ入った。演劇部の徽章は古びていたが、胸元で確かに光っていた。 「閉じ込めたことを、許してほしいとは言いません」 湊は扉の表示板を見た。 「でも、誰かが黙って背負えば済む学校のままなら、また別の誰かがいなくなると思ったんです」 岸本は机上の訂正書を差し出した。湊は受け取らず、真琴へ視線を向けた。 「これは、真琴が決めることだよ」 真琴は紙を手に取った。期限後と押された欄を見つめ、深く息を吸う。 「私は進学します。支援のことも、足りなかった書類のことも知った上で、自分で方法を探します」 震えは残っていた。それでも声は講堂の奥まで届いた。 「それから、私だけが助かる形にはしません。困っている人が、先生一人の返事を待たなくていい仕組みにしてほしい」 榊は頭を下げた。卒業式の開式まで、もう時間はなかった。提案書は学校名義の成果として出すのではなく、真琴、保護者、地域支援団体、学び直しの場で学ぶ湊の連名で提出されることになった。 式が始まる。壇上の空いた椅子には、卒業生でも来賓でもない人々が座った。学び直し支援の職員、卒業を延期した若者、相談先を探している保護者たちだった。 予定されていた代表挨拶の時、真琴は演台へ立った。用意された原稿を閉じ、自分の言葉で進路を選ぶことと、選べなかった人にも次の場所があることを語った。 客席の後方で、舞台スタッフの湊が照明を調整していた。拍手が起こる直前、彼は舞台袖の暗がりから一度だけ真琴を見た。 そのとき、真琴は気づいた。昨夜の装置を動かしていたのは、湊だけではない。客席に置かれた四つの紙も、投影された写真も、かつて湊が誰にも見せられなかった相談記録をもとに、地域の支援員たちが準備したものだった。 湊は一人で救われたのではなかった。誰かに手を伸ばされ、その手を今度は別の誰かへ渡していた。 壇上の空席は、もう欠けた者のための席ではない。戻る人も、これから迷う人も、自分の声で座るための席になっていた。

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地方都市の市民文化会館、卒業式前夜。非常用扉が電子錠で閉じ、担任教師・岸本と、進路に悩む生徒、保護者、校長の四人が講堂に閉じ込められる。岸本は生徒の不正受給を隠して進学を守ろうとしたが、そのために別の生徒が退学へ追い込まれた。暖房の切れた密室で、愛情と犠牲の値段を乾いた会話で暴く。朝、扉を開けたのは失踪した生徒であり、事件を仕組んだ真の理由が明かされる。