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眠れる探偵こそ王だ

小説ID: cmubdgtjf001q01mzcsa72ky2

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「騒ぐな。水を」 口から出た声は若く、よく通った。ラズは自分の喉を押さえ、侍女の差し出した鏡を奪うように見た。鏡の中のアシルは、肖像画で見たままの十七歳だった。 「ここはどこだ」 「北の離宮です。殿下が……お戻りになった場所として、ずっと閉じられておりました」 侍女は泣きながら答えた。十年前に消えた王子の寝室が、なぜ王宮の祭壇ではなく離宮にあるのか。問いを重ねる前に、胸の奥で別の声がした。 『聞こえるか、ラズ』 低く、怯えを隠しきれない声だった。ラズは息をのんだ。 「アシルか」 侍女が首をかしげる。声は耳からではない。窓の外、離宮の小さな祈りの間に置かれた涙石が、淡く青く脈打っていた。 『私は探偵の身体にいる。君の机で目覚めた。手足は大きいし、帳簿と寝かけの茶がある』 「それは私の日常だ。勝手に茶を飲むな」 『こんな時に言うことか』 石の光が強まる間だけ、互いの声は明瞭だった。ラズは急ぎ、王冠の消失と自分が石に触れたことを伝えた。アシルはしばらく黙った後、祭壇の様子を思い出すように告げた。 『展示台の近くに砂があった。都の砂より白く、粒が粗い。北の離宮へ来る道の砂に似ている』 ラズは祈りの間の敷居を見た。確かに庭の砂と同じ白い粒が、誰かの靴跡に沿って残っている。 『それから台座の錠前に、新しい傷があった。鍵穴の縁だけが、磨いたばかりのように明るい』 王冠は三本の鍵で守られていたはずだ。傷は、鍵を持つ者ではなく、急いで別の道具を使った者の痕跡かもしれない。 「その傷を誰が見た」 『私だけだ。いや、今の私は君だが』 青い光が揺らぎ、声は遠ざかり始めた。ラズは涙石へ手を伸ばしたが、石は冷たく沈黙した。 扉の向こうで、重い足音が止まる。 「殿下のお目覚めを、ザハル大臣がお聞きになりました」 侍女の声は震えていた。ラズは鏡の中の王子を見据えた。王冠を盗んだ者は、砂を残し、鍵傷を隠し損ねた。そしてこの身体が戻ったことを、最も早く知りたがる者が来ている。

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