夜半、窓辺の白砂が青く濡れたように光った。涙石から届いたアシルの声は、マルドの証言と窯場の石蓋の場所を告げた。 ラズは侍女を連れず、温室の露が示した白百合の列をたどった。北壁の排水路は、人ひとりが身をかがめて進める幅しかない。湿った石を抜けると、水のない古い水路へ出た。壁には新しい石材が積まれ、表から入口を塞いでいる。ザハルの再建資材は、壊れた場所を直すためではなく、誰かを閉じ込める蓋にも使われていた。 水路の先、井戸の底に隠された扉があった。王子の指輪を鍵穴へ押すと、低い音を立てて開く。中は離宮の地下に造られた小さな居間で、乾いた薬草と灯油の匂いがした。 机の上には帳簿が重ねられていた。採石場から運んだとされる石の数と、実際に都へ届いた数が合わない。差額の石材は水路の封鎖と、離宮の周囲に置かれた見張り小屋へ回されている。許可印はいずれも翼を閉じた鷹だった。 「その帳簿を読める者を、ずっと待っていました」 奥の薄闇から現れた王妃は、やつれていたが、確かに生きていた。ラズは言葉を失い、それから深く頭を下げた。 王妃は一年前、ザハルが再建費を抜き取り、民の困窮を王家の怠慢に見せかけていると知ったという。本物の王冠は密かに安全な場所へ移し、宝物庫には修復前の型から作らせた代用品を残した。大臣がそれを盗難に見せかければ、王家を貶める企みを証明できると考えたのだ。 「ですが、私がここへ入った後、水路は塞がれました。ナディアたちへ残した印も、外へ出るためではなく、真実へ来られる人を待つためのものになりました」 ラズは帳簿の余白にある朝露の印を見た。王冠の隠し場所そのものではない。偽物を使う者が動いた時だけ、次の道を示す暗号だった。 遠くで石を動かす音がした。見張りが水路を確かめに来たのだろう。ラズは帳簿を衣の内へ収め、王妃を見た。 「待たせすぎた。今度は、こちらが大臣を待つ番だ」
眠れる探偵こそ王だ
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