最初の水曜日、小さな車は九時ちょうどに商店前を出た。祖母から届いた連絡には、乗客は三人、とあった。蓮は家の机でそれを読み、遠隔授業の画面へ目を戻した。窓の外を走る車の音は、ここまでは聞こえなかった。 午前の授業を終えたあと、蓮は母の車で駅前へ向かった。この日は学校と相談し、午後の課題を帰宅後に提出することになっていた。通学方法を試す一か月の予定表には、まだ要相談の文字が残っている。 帰りの乗り場では、祖母が交代の受付係から引き継いだ紙を確かめていた。 「行きと違う所で降りるなら、ここを直すね」 買い物袋を足元に置いた女性がうなずいた。祖母は記入した停留所を読み返し、紙を挟む板に留めた。名前を集めていた頃とは違い、今は一人を間違いなく家の近くへ運ぶための確認だった。 若手職員も乗り場に来ていた。 「紙で受け付けた分も、端末の利用分と合わせて次の検証資料に載せます。個人が分からない形で、乗り降りした場所と人数を」 「三人じゃ、またなくなるかい」 男性に尋ねられ、職員は車内の空席を見た。 「初日だけでは決めません。ただ、補助の継続には今後の評価が必要です」 「水曜だけじゃ、金曜の診察には使えないんだよね」 別の女性の言葉に、祖母はうなずいた。受付の紙には、実際に乗った人の記録と分けて、利用できなかった日の相談も残すことになった。 蓮は女性の買い物袋を持ち上げた。底が思ったより重かった。座席の脇へ置くと、長ねぎの先が背もたれに触れた。 「帰りがあるから、今日は米も買えたの」 女性が袋を引き寄せた。蓮は隣の空いた席に座った。自分の通学を救うつもりで始めたことが、今日は誰かの米を運んでいる。 夕方、母は帳簿に初日の運賃収入と、運転手や受付、会計の報酬を記した。祖母は受付の対価を受け取り、金額を確かめて署名した。 「来週は午前、代わってもらうよ。私も病院だから」 母は交代する人の欄に線を引いた。 蓮はノートを開いた。水曜十四時。その下には、翌週水曜九時と書いてある。七時十二分は戻らず、この二つの時刻もいつまで残るか分からない。それでも蓮は、帰りの時刻を消さなかった。今日、その時刻に帰ってきた人がいた。
数えられなかった乗客にも週二便を
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近未来の日本で、十五歳の少年・蓮、退職した祖母、非正規雇用の母、市役所の若手職員を描く、乾いた現実感のある群像劇を書いてください。公共交通の縮小で通学できなくなった蓮は、廃止予定の路線を住民運行に変えようとする。採算基準、運転手不足、無償奉仕を美徳とする祖母と労働への対価を求める母の対立が障害となる。行政の需要予測には、端末を持たない高齢者の移動が一件も載らない。紙の乗車記録で欠落を示し、週二便だけの有償運行が始まる、小さく希望の残る結末にしてください。
