chapalette Logo

数えられなかった乗客にも週二便を

小説ID: cmvwj3jr3000201s6xz884zx5

5 / 10

若手職員から連絡が来たのは、集会所での話し合いから四日後だった。蓮は放課後、祖母と市役所へ向かった。 机に置かれた資料には、内部検討用と小さく印字されていた。紙の乗車記録を、時刻表や既存の運行資料と照合した結果が並んでいる。 「便を特定できない記録は、時間帯ごとに分けました。同じ移動を重ねて数えないよう、判断できないものは別にしています」 職員が指した欄には、端末を持たない利用者の移動が、従来の予測から欠けていたと書かれていた。祖母は眼鏡をかけ直し、その一行をゆっくり読んだ。 次の頁には、記録期間は二週間、協力者の利用日に偏りがある、とあった。 「病院へ行く曜日に、記録が多く集まっています。この人数が毎日乗るとは言えません。記録のない日を、利用がない日とも扱えません」 蓮は表の余白を見た。埋めたつもりの数字の周りに、まだ確かめていない時間が残っていた。 「でも、予測は増えるんですよね」 「はい。修正を進めています。ただ、現行の大型車両を今の頻度で走らせる場合、修正後も採算基準には届きません」 祖母が資料から顔を上げた。 「人数が違っていたのに、結論は同じなの」 職員はすぐには答えず、車両費と運転にかかる費用の欄を二人の側へ向けた。 帰宅すると、母が署名用紙を食卓の端に寄せた。廃止に反対する名前は増えていた。蓮はその隣に白い紙を置いた。 「同じバスを残すだけじゃなくて、小さい車で走る案も出したい」 祖母は椅子を引いた。 「住民で運営するってことだね」 「運転まで簡単にできるとは限らないけど、必要な資格や手続きは、市役所に聞ける。まず、何が要るか知りたい」 母が鉛筆を差し出した。 「小さくしたら、全部安くなるとは限らないよ。人の仕事は残るから」 蓮は運転、受付、車両、と書いた。費用の欄は空けたままにした。 翌日、署名用紙と一緒に運行案を差し出すと、職員は二枚を分けて受け取った。 「こちらは、実施できる条件を調べましょう」 まだ路線も時刻も決まっていない紙だった。蓮は控えを鞄にしまった。帰りのバスに乗る前に、明日の七時十二分を確かめた。提案した小さな車が、その時刻に来られるかどうかは、まだ書けなかった。

Share:

LINE