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数えられなかった乗客にも週二便を

小説ID: cmvwj3jr3000201s6xz884zx5

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土曜日の朝、蓮は祖母と停留所に立った。家で作った用紙には、日付、氏名、乗った時刻、乗り降りした停留所を書く欄があった。 「路線の使われ方を市役所に伝えたいんです。協力してもらえませんか」 祖母が顔見知りに声をかけ、蓮が紙を渡す。買い物かごを提げた女性は、氏名の欄で鉛筆を止めた。 「名前まで出るのは、ちょっとね」 蓮は名前が必要な理由を答えられなかった。 「書かなくて大丈夫です」 そう言って線を引いたが、女性は紙を返した。祖母も、それ以上は勧めなかった。 次の用紙から氏名欄を外し、何に使うかを上に大きく書いた。それでも、集まった紙には空欄が残った。 「乗ったのは十時だったか、十一時だったか」 男性が腕時計を見ながら首をひねる。蓮は正確な時刻にこだわらず、午前、昼ごろ、午後から選べるように直した。分かる人には、便の時刻を書いてもらうことにした。 指が思うように動かないという女性には、祖母が代わりに書こうかと尋ねた。女性がうなずくと、蓮が停留所の名前を読み上げた。 「帰りは駅前から。病院のバスを降りて、こっちへ乗るの」 記入した紙を見せて確かめると、女性は降りる停留所を一つ手前に直した。 「そこなら、家まで坂がないから」 二週間分の記録を食卓に並べると、紙ごとに違う筆圧が、薄い影を作った。蓮は集計の表に個人を特定する話を入れず、行き先と時間帯を必要な範囲でまとめた。分からない欄は、分からないまま残した。 午後の駅前には、病院から別のバスで戻る人の乗り継ぎが重なっていた。商店街から乗る人は、昼前より夕方に多かった。 「帰りだけ乗るのよ。袋が重くなるから」 そう話した女性の足元で、長ねぎの先が揺れていたのを思い出した。図書館から本を借りて帰る記録も、何枚かあった。 蓮は自分の登校する七時十二分を、最初に赤で囲んでいた。その丸だけが、表の中で妙に大きかった。 「朝だけあればいいって、思ってた」 祖母は紙の端をそろえた。 「私は病院へ行く便ばかり考えてたよ」 蓮は午後の欄にも目を移した。学校に着いたあとも、バスは走っていた。その座席に誰が座っているのかを、ようやく少し見られた気がした。

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