出発の日、港の待合室で、ナギは鞄を膝に抱えていた。寮の荷物は思ったより少なかった。なくした予定まで詰めれば、船の積載量を相談するところだった。 カイは少し離れた椅子の前で止まり、封筒を差し出した。 「読んでほしい。今、ここでじゃなくていい」 ナギは受け取り、封を開いた。 手紙には、交換を事故と偽ったこと、試験と調査を押しつけたことへの謝罪があった。学費が怖かったから、という言い訳はなかった。 奨学生資格の取消しを受け入れ、規程による処分に従うこと。返還相談には家族と出席し、収入や支出を正しく伝えること。訂正した記録を確認すること。 最後の行だけ、字が少し乱れていた。 ナギの失った学校生活を、これで取り戻せるとは思っていません。 ナギは手紙を畳んだ。ちゃんと書けたね、と褒める役には、もう戻らなくてよかった。 「返事が遅くても、制服に代筆させないで」 カイの口元がわずかに動いた。 「うん。自分で書く」 乗船を知らせる鐘が鳴った。 また一緒に菓子を食べようとは言わなかった。許すとも、もう会わないとも決めず、ナギは封筒を鞄にしまった。次の手紙を受け取る場所だけは、伝えてあった。 船が海中の港を離れると、窓が青く明るくなった。 上着につけていた海藻の襟飾りが、ぴしりと伸び、それから前へ折れた。借りていた制服から移った動作記憶が、まだ少し残っているらしい。 最後の一礼のようだった。退場の挨拶まで服に任せると、拍手のないところでも妙に大舞台になる。 ナギは苦笑して、指でそっと緩めた。 背筋を少し丸めたまま、水平線を見た。誰の記録も更新しない姿勢で、船はちゃんと進んだ。 海上の桟橋には、家族が待っていた。 母は鞄ではなく、先にナギの肩を抱いた。 「お帰り。お菓子、あるよ」 「大きいほう、今日は僕にちょうだい」 「全部あなたのよ」 それは少し、想定外だった。 家で新しい学校の案内を開くと、入学相談の日付が載っていた。窓の外を魚は通らない。代わりに洗濯物が揺れていて、靴下の片方がやけに偉そうだった。 退学の通知も、カイの手紙も、机の端に置いた。親友を救おうとして選んだ嘘の代償は、消えなかった。 ナギは案内の余白に、尋ねたいことを書き始めた。 今度の席はまだ決まっていない。けれど、そこへ座る名前は、もう決まっていた。
借りた身体、嘘の代償は退学
小説ID: cmvxyjahi000201s6ofnos3v6

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海中の寄宿学校に通う素朴な学生が、親友の潜水競技選手と身体を入れ替える、温かくユーモラスな小説を書いてください。主人公は親友の進級試験を代わりに乗り切ろうとするが、泳ぎが苦手で、親友には奨学金の不正取得疑惑もある。海藻製の制服が本人の癖を覚えており、身体と違う動きをして入れ替わりを露見させかける。親友が主人公を身代わりにするため交換を仕組んだと判明し、友情と裏切りを描く。主人公は親友を救うため不正を告発し、和解の余地を残しつつ、自分も規則違反で退学して海上へ戻る代償のある結末にしてください。
