審査室の扉には、関係者以外の入室を控えるよう札が出ていた。廊下の魚は平然と窓を横切った。関係者かどうかを尋ねても、たぶん答えない。 ナギの隣には学生相談担当が座った。机には提出した申告書があり、自分に不利な行も、同じ大きさの字で残っていた。 最初に確認されたのは、奨学金の選考だった。 担当者が大会の原記録を照合せず、誤った受賞歴で選考を進めたこと。その誤りに気づいたカイが訂正せず、支給を受け続けたこと。 「学校の確認不足と、本人の隠蔽は、別々に判断します」 委員の言葉を聞きながら、ナギは手を膝に置いた。どちらか一方の責任で、もう一方が消えるわけではなかった。 後日届いた通知には、原記録の照合と複数人での確認を選考に組み込むこと、カイの奨学生資格を取り消すことが記されていた。処分と返還についても、規程に沿った説明と相談が行われるという。 ナギへの判断は、別の封筒に入っていた。 替え玉受験による退学。 薄い紙だった。これほど重いものなら、配達には台車を使ってほしかった。 ナギは弁明の機会に、交換は事故だと聞かされ、申請の計画も知らなかったと話した。カイの申請と自分の同意がどう扱われたかも、記録で確認してもらった。 「でも、試験の朝には、規則を知っていました」 そこから先は、小さな声でも省かなかった。 学生相談担当の付き添いで再審査を求めた。欺かれた経緯と、自分から申告したことは考慮された。それでも、別人だと承知して本人確認で嘘をつき、試験参加を選んだ責任から、退学の判断は変わらなかった。 通知を読み終えたあと、ナギはしばらく椅子に座っていた。窓際の席も、寮の夕食も、次の学年も、ひとまとめに遠くなった。 相談担当が、海上の学校の資料を置いた。 「編入や学び直しの相談ができます。修得した科目を認めてもらえるかも、確認しましょう」 ナギは紙を二枚並べた。一枚には失うもの、もう一枚には、これから選べるものを書いた。 最初の紙ばかり埋まった。二枚目は妙に余白が広い。 「まだ、こんなに決まってないんですね」 「今日、全部埋めなくていいですよ」 ナギは二枚目に、海上の学校へ問い合わせる、と書いた。 帰る場所はある。次に学ぶ場所は、自分で尋ねてみようと思った。
借りた身体、嘘の代償は退学
小説ID: cmvxyjahi000201s6ofnos3v6

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