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借りた身体、嘘の代償は退学

小説ID: cmvxyjahi000201s6ofnos3v6

借りた身体、嘘の代償は退学
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寮へ戻ると、ナギは奨学金の確認通知を広げた。優勝と書かれた日付を指でなぞって、ふと思い出した。 「この日、二人で談話室にいたよね。海が荒れて、故郷からの荷物が遅れた日」 菓子の届かない午後、カイは空の缶を三度開けた。四度目には、ナギが中に紙を入れた。まだありません、と。 「大会って、沖の競技場だったはず。学校から出られなかったよね」 カイは椅子の背に手を置いた。 「事務の間違いだよ。似た名前の選手もいるし」 「じゃあ、訂正してもらおう。校内記録も予選棄権になってる」 「試験前に騒ぐことないだろ。落ち着いてからでいい」 「確認期限、試験の前日だよ」 カイは通知ではなく、壁の時計を見た。 「僕がやるから」 その言葉は昨日も聞いた。引き出しにしまわれた約束には、どうやら取っ手がなかった。 夕食前、ナギは図書室へ向かった。制服が扉の前で胸を張ったので、静かに入るだけなのに凱旋になった。 司書に旧式交換装置の資料を尋ねると、分厚い規程集が出てきた。厚みだけなら、装置を止める重しに使えそうだった。 添付の校則で読んだ事前許可の項目には、さらに細かな手続きがあった。交換には双方の事前申請と管理者の承認が必要。復帰操作には、交換した二人の立ち会いが必要。 ナギは同じ行を二度読んだ。 カイ一人が戻し方を調べても、ナギを置いて元には戻れない。なら、どうして一緒に調べようと言わなかったのだろう。 次の頁には、制服の動作記憶は姿勢や所作を補助するのみで、技能や本人性を保証しないとあった。背筋の立派さには、学校のお墨付きが一つもなかった。 試験の本人確認では、身体の登録情報に加え、交換の有無を申告すること。別人と承知して受験する行為は、替え玉受験として退学を含む処分の対象となる。 頁を押さえる指が冷えた。 代わりに授業へ出ることと、代わりに試験を受けること。その間には、友情だけでは渡れない線が引かれていた。 寮の廊下で、カイが待っていた。 「どこへ行ってたの」 「図書室。戻るには二人が必要なんだね」 「……そうみたいだな」 その短い間を、ナギは聞き逃せなかった。 親友の顔を見れば安心できるはずだった。けれど目の前にあるのは、自分の顔だった。そこに浮かぶ笑みが誰のものなのか、初めて分からなくなった。

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