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借りた身体、嘘の代償は退学

小説ID: cmvxyjahi000201s6ofnos3v6

借りた身体、嘘の代償は退学
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控室に入ってきたカイは、ナギの隣ではなく、机を挟んだ椅子に座った。いつもなら菓子の缶を置くくらいの距離が、今日は妙に遠かった。 担当教員は二人の名前を確かめ、記録板を伏せた。 「本人確認のため、交換装置の管理記録を調べたい。二人に関係する箇所だけ確認します。同意してもらえるかな」 「はい」 ナギが答えると、制服まで深く頭を下げた。こんなときにも礼儀の追加注文が入る。 カイは少し遅れて、うなずいた。 管理室から届いた記録には、装置を使った日時と、その前に提出された申請が載っていた。 申請者、カイ。 ナギはその二文字を見つめた。見慣れた名前なのに、知らない人の署名のようだった。 「事故じゃ、なかったんだね」 カイの指が、椅子の縁をつかんだ。 担当教員が日付を指した。 「この申請は、奨学金調査の通知を送った翌日に出されています」 ナギが寮で受け取った確認通知より前だった。カイには、もう調査の知らせが届いていた。 戻す方法を探すと言っていた時間も、まだ調べていると言っていた時間も、別の形に並び直されていく。 「記録が間違ってること、知ってたの?」 「……知ってた」 「訂正しなかったの?」 カイはうなずいた。 「じゃあ、僕に何をさせるつもりだったの」 伏せていた目が、一度だけ上がった。 「試験を受けて、調査の質問にも答えてもらおうと思った。ナギなら、先生に信用されてるから」 「僕、泳げないよ」 「身体と制服があれば、何とかなると思った」 その言葉に、ナギの背筋が伸びた。制服のせいだった。腹立たしいほど、立派な聞き役になっていた。 ナギは待った。 冗談だよでも、古い学校は大胆だからでもいい。いつもの軽口が来れば、怒りながらでも続きを話せる気がした。 けれどカイは何も言わなかった。 壁の時計が進んだ。窓の外を魚が通った。誰も目で追わなかった。 大きいほうの菓子を渡していた手が、膝の上で固くなった。 「僕が代わりに受ければ、困るのは僕だったんだね」 カイの唇が動いたが、声にはならなかった。 ナギは担当教員へ向き直った。 「話せることは、全部話します。僕が知っていて嘘をついたことも」 親友を守りたいと思った気持ちまで、嘘だったわけではない。 でも、カイを守ることと、カイの嘘を守ることは違う。 今度のお辞儀には、制服の力を借りなかった。

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