日曜の夕方、食卓に二枚の地図を広げた。妹は養母を寝かせてから席につき、妻は候補地ごとの見積書を並べた。成人した上の子も、仕事帰りに寄ってくれた。 川沿いの土地なら、荷車が敷地内で向きを変えられる。原石も十分に置けるし、切断機の音で隣家に気を遣わずに済む。私は作業場の位置を指で囲んだ。 「ここなら、今と同じようにできる」 妹は地図の外側を見ていた。 「診療所まで片道どれくらい。買い物は。母さんを連れて、毎回そこまで行くの」 駅近くの物件には診療所も市場もあった。しかし裏庭は狭く、石を積めば荷車を入れられない。私は候補から外そうとした。 「加工を全部ここでやらなければ、置けるんじゃない」 上の子が、隣町の加工場からもらった料金表を差し出した。大きな石の切断だけを頼み、店では仕上げと注文の受付をする案だった。 「運び賃が増える」 「増える分と、機械を買わない分を比べようよ」 妻は新しい紙を置いた。土地と建物に毎年かかる税、設備代、運送費、借入の返済。広い土地は安く見えても、水路を引く費用と通院の車代が重なった。駅近くは家賃が高い代わりに、仮住まいを別に借りずに済む余地があった。 「家計から出す額には、上限を決めたい」 妻の指が、私の書いた不足額の下で止まった。 「店のためなら何でも出せる、とは約束できない。私たちの老後もあるし、子どもの貯金も当てにしないで」 私は窓辺の端材に手を置いた。養父の声が短く響いた。 「この幅なら、二枚取れる」 昔の作業場で口にした言葉だった。どんな家を選べばよいか、石は答えなかった。 表に介護の移動時間を加えると、妹が週に使う時間が候補地ごとに変わった。上の子は外注先への往復を足し、妻は自分の勤めを減らした場合の収入を書いた。私は同じ広さの作業場を描き直してばかりいた。 皆が計算しているのは、移ったあとも払いつづける暮らしだった。私だけが、取り壊される家の形を紙の上に残そうとしていた。 「今の店と同じ、という条件はいったん外そう」 口にすると、裏庭まで失う気がした。それでも私は図面を脇へよけ、外注の料金表を手元に引き寄せた。
家業も介護も堰堤の補修も
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