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家業も介護も堰堤の補修も

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家業も介護も堰堤の補修も
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移転の下見に来る業者へ返事をした翌朝、養父の通院日と同じ日に印をつけていたことに気づいた。養母も薬の調整で診療所へ行く。私は妹に、いつものように頼む、と伝えかけた。 妹は鞄から薄い帳面と領収書の束を出した。車代、薬代、夜中に買った寝具。立て替えた額の横には、日付と時間が細かく記されていた。 「先月の木曜、私が何をしてたか分かる」 私は首を振った。 「父さんを送って、帰りに買い物。夕方に母さんの薬。夜は呼ばれて、朝までここにいた」 その日、私は納期の迫った石を磨いていた。店を開けていた時間は帳簿に残っている。妹の夜は、売上のどの欄にもなかった。 「立替分は返す。ほかも、時間で計算すれば」 妹は帳面を閉じなかった。 「全部に値段をつけてほしいんじゃない。火曜と木曜は来ない。その日に私を入れないでほしい」 「でも、家族だから、急なときくらいは」 言い終える前に、妹が私を見た。 「私が家族なのは、その二日も同じでしょう」 台所から養母が呼び、妹が立ちかけた。妻が先に席を離れると、妹は浮かせた腰をゆっくり戻した。 私は帳面の木曜を指で追った。勤めを早退した日には、短く、友人との約束を取り消す、とあった。空いているから頼んだのではない。頼めば空けてくれると思っていた。 窓辺の石に触れると、以前の私の声が響いた。 「妹が来るから大丈夫だ」 誰に言ったのかは分からない。石に残る短い声には、そのあと妹が何を断ったのかまでは含まれていなかった。 昼、役場の介護相談窓口へ連絡した。訪問の世話や送迎には利用の条件があり、希望した曜日に空きがあるとも限らないという。私は申請に必要な書類と、負担額を確かめる手順を書き留めた。 「サービスが決まるまでは、どうするの」 妹に聞かれ、私は返事に詰まった。店を閉めれば下見と注文を組み直す必要がある。妻の勤務も、私の都合だけでは変えられない。 「来ない日は、先に書く」 新しい紙の火曜と木曜に線を引いた。残る日の送迎も、立替金を返す日も、まだ決められなかった。 妹はその紙を見ても、うなずかなかった。私は業者の連絡先を引き寄せた。まず自分の予定を動かす電話を、私からしなければならなかった。

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