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家業も介護も堰堤の補修も

小説ID: cmvzdza6q000201s6dkswlmpt

家業も介護も堰堤の補修も
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業者の下見を翌日にずらし、私は養父母を診療所へ送った。帰ってから、撤去する戸棚の書類を床に並べた。移す帳簿と捨てる包み紙を分けていると、底板の隙間から、油紙に包まれた薄い冊子が出てきた。 表には、上流砂防工事納品帳、とあった。私がこの家へ来た年のものだった。 石の寸法と本数の下に、通常の代金とは別の欄がある。 養育分。 同じ包みの送金控えにも、その文字が続いていた。送り主の欄は空白で、受取人は養父。季節ごとに一定額が届き、数年後に途切れている。最後の控えには、残額受領、と小さく書かれていた。 私は寝室から灰色の丸石を持ってきた。 「この子の分は別に」 幾度も聞いた女の声だった。今度は、別に、の先に帳簿の欄が浮かんだ。 納品帳の番号を頼りに、作業場の保存見本を探した。棚の奥に、同じ番号を墨で記した欠片があった。指を置くと、低い男の声がした。 「こちらは工事の代金で」 少し待つと、女の声が重なった。 「この子の分は別に」 丸石と同じ言い回しだった。ただ、声はそこで切れた。誰の子かも、その女が誰かも、石は説明しなかった。 私は控えを養父の膝に置いた。 「どうして、これがあったことを言わなかったの」 養父は長く紙を見ていた。 「おまえを迎えてしばらくして、工事の世話役が持ってきた。預かった金だと言った。名を尋ねても答えなかった」 「母親からだとは」 「はっきりとは聞いていない。向こうの事情を聞くより、おまえの暮らしを整えるのが先だと思った。そのあとも、いつ話すか迷ったままだった」 私は、なぜ迎えに来なかったのかと尋ねかけた。けれど、その答えを養父が持っているとは限らなかった。 「知らないなら、知らないまま見せてほしかった」 養父はうなずき、控えから手を離した。 捨てられたと思っていた年月が、紙数枚で消えるわけではなかった。それでも、自分の暮らしから私を切り離しただけなら、なぜ私のための金を分けたのだろう。 納品番号を新しい紙に写した。隣には、送り主未確認、と記した。まず役場で、この番号につながる工事資料を探してもらおうと思った。

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