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家業も介護も堰堤の補修も

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家業も介護も堰堤の補修も
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新しい店の入口には、旧宅の敷居石を据えた。荷車が越えやすいよう段差をなくし、欠けた縁だけを削った。開店の朝、手を置くと、養母の声がした。 「泥はここで落としてね」 私は靴底を見て笑い、それから本日の受付時間を扉に掛けた。 店は小さくなったが、注文を断る基準も、外注に回す寸法も決まっていた。通院の日には午前を閉めた。妹が来ない曜日を、誰かが勝手に埋めることはなかった。 数年後に養父を、その次の冬に養母を見送った。最後まで分担表には変更が入り、訪問の世話を増やした月の支払いも残った。葬儀のあと、妹は自分の帳面と領収書を照合し、立替分が残っていないことを確かめた。 「これで、片づいたね」 その言葉が何を指すのか、私は尋ねなかった。 季節が幾度も巡り、上の子の髪に白いものが交じった。受付を手伝う時間は減り、代わって成人した孫が、週に三日、店の仕事に加わった。続けるかどうかは一年ごとに話すことになった。 孫は受注帳の隣に、道具の修理と建物の維持費を記す帳面を置いた。 古い見本から客の声が聞こえ、私は納期を伝えた。 「来月の祭りまでだと言っていた」 孫は参考の欄へ書き、客に確認の手紙を出した。返事には、今年は祭りのあとでよい、とあった。正式な注文票には、その日付が記された。 「声のほうも、消さなくていいよ。何を確かめたか分かるから」 二つの記録を並べる手つきに、養父の教えが私を通り越して残っていた。 春、役場から堰堤の補修資料が届いた。母のいる石には表面の点検が必要で、周囲の継ぎ目の補修と、排水設備の更新も予定されていた。石へ帰った身が強くても、水の通り道まで永遠に保つわけではなかった。 孫は工事期間を帳面に写し、店から出す補修材の見積もりを作った。 「お母さんの場所でも、代金と仕事の範囲は決めよう」 私はうなずいた。母への恩を理由に、孫の手間まで無償にはできない。 夕方、孫が敷居石の縁を調べ、小さなひびを記録した。補修する日と費用を確かめ、次の点検日も書き添える。 私は入口を残せたことばかり喜んでいた。その石を明日も使えるようにする手間は、もう孫の予定に入っていた。帳面を閉じる前に、私は自分が手伝える日を伝えた。

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