契約書をしまった夜、食卓に四枚の紙を置いた。費用、店の担当、介護の曜日、外部サービス。前に書いた案を、今度はそれぞれが引き受けられる約束に変えるためだった。 妻は家計から出す上限を読み上げた。 「追加工事が出ても、ここから先は出さない。貸す分と渡す分も分けて書いて」 私は金額の下に返済日を記した。移転費が上限を超えたら、買う予定の道具を減らす。家計で埋めるのではなく、まず店の計画を変える。その一文を書くまで、妻は次の紙を取らなかった。 上の子は注文票の束を引き寄せた。 「受付の記録と外注先への連絡はできる。でも、店を継ぐ約束じゃないからね」 私の手が止まった。任せられると聞いて、もう移転後の看板に並ぶ名前まで考えていた。 「続けられなくなったら、担当を降りていい。継ぐかどうかは、そのとき別に聞く」 子は私の顔を見てから、担当欄に自分の名を書いた。 妹の火曜と木曜には、担当なし、と記した。 「急なときも、まず私を呼ぶことにはしないで」 空いている枠に見えないよう、私は二日の欄を線で囲んだ。月曜の夕方と金曜の薬の確認を妹が引き受け、水曜は私、土曜の午後は妻が受け持つ。日曜は週ごとに相談し、決まらなければ私が店の予約を減らすことにした。 相談窓口から届いた利用料の見込みを、最後の紙に写した。訪問の世話と送迎の費用は、養父母の収入から使える額を二人に確かめ、不足分の負担も決めた。利用開始までの空白には、私の名前を入れた。 「私は、まだ十年くらい同じように働けると思っていた」 私の指には、養父よりずっと浅い皺しかなかった。石の身はゆっくり老いる。その遅さで、皆の時間まで測っていた。 「だから、みんなも待てると思った。待っている間に何を失うか、聞かなかった」 妹は黙っていた。許すとも、分かったとも言わなかった。 養父が次の診療日の札を卓上へ置いた。 「車は誰が出す」 「私が出す。午前の受付は閉める」 子が注文票に休業時間を書き、妻が診療所へ伝える事項を添えた。妹はその日を自分の予定帳から消した。 四枚の紙を重ねると、角はそろわなかった。私は端を切らずに壁へ留めた。翌朝、最初にしたのは、通院と重なっていた納品日の変更を客に頼むことだった。
家業も介護も堰堤の補修も
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