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先輩へのお守りが指の温もりを奪う

小説ID: cmw6j7cen000201lh4jlz0lvb

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日曜の夕方、列車は山あいを走っていた。セナ先輩が私の手からお守り袋を受け取り、膝に戻す。私は空いた両手で、名物菓子の二つ目の袋を開いた。 紙の端は少し硬く、折り目が指に引っかかった。そんな些細なことを、いちいち確かめてしまう。 「まだ入ってたんだ」 「帰ってからの分です。でも、今食べても帰ってからの分をまた買えばいいので」 「それ、いつ帰れるの」 先輩が笑った。私も笑って、鞄から出かけた手袋を押し戻そうとする先輩の手元に目を留めた。茶色い毛糸。何度も借りた、ありふれた手袋だ。 「少し、触ってもいいですか」 先輩は黙って差し出した。私は指でつまみ、編み目をこすった。見えているのに、何も届かない。布を挟んだはずの指が、空気だけをつまんでいるようだった。 手袋を返すとき、先輩の手に触れた。温かさは、ちゃんと分かった。分かることが、かえって怖かった。 これから冬が来るたびに、何を失ったか思い出すのだろう。私は袋の縁を握り直し、紙の硬さに少しだけ安心した。 「これ、大事にするね。すごく温かい」 先輩は銀色のお守り袋を両手で包んでいた。夕日の当たらない席なのに、その編み目だけが淡く光って見えた。 「次の贈り物は、手作りのお菓子にします」 「楽しみ。味見は任せて」 「完成する分も残してくださいね」 いつものやり取りができた。これからも、一緒に食べるものはある。そう考えて、私は大きいほうの菓子を先輩に渡した。 列車が緩い坂を上っていく。窓の外には木立と畑が続いていた。もう、海の見える場所ではない。 それなのに、ガラスには夕暮れの海が映っていた。 赤い光が水面を細く照らしている。先輩の横顔の向こうまで、波の筋が続いていた。向かいの窓を見ても、そこには山しかなかった。 膝の上のお守り袋へ目を落とす。先輩の親指が、結び目を優しくなでた。その隙間から、ざあ、と波の音が一度だけ聞こえた。 「蜂蜜、けっこう濃いね」 先輩は気づかず、菓子をかじった。 冷たさが、指ではないところへ沈んできた。手を伸ばしていないのに、あの袋の底へ触れてしまった気がした。窓に映る海には、岸がなかった。 私はうなずこうとした。けれど、菓子を持つ手をしばらく動かせなかった。甘い欠片を落とせば、どこへ沈むのか分からなかった。

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食いしん坊の見習い冒険者が海辺の観光地へ週末の小旅行に出るホラー小説を書いてください。旅の目的は名物を食べ歩き、世話になった先輩へ手編みの小物を贈ること。露店で買った銀色の毛糸を編むと、海で死んだ人々が濡れた足跡を残して宿へ集まり、編み目の数だけ主人公の身体を海底へ引く。親しみやすく茶目っ気のある語りで、食欲と編み直しの失敗を描きつつ恐怖を深める。毛糸を返せば先輩が溺れ、完成品を渡せば主人公の指の感覚が失われると判明する。先輩を救って贈り物を渡すが、二度と毛糸の温かさを感じられない代償を残す。