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妖怪三十体自己紹介

小説ID: cmpl447rq000001p4f0s0cuc1

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第十番の名が呼ばれたとき、座敷の空気はもう驚かなくなっていた。だが立ち上がった者を見て、私は思わず息をのむ。背は低く、年の頃も読めない。けれど輪郭だけが妙に鮮やかで、まるで今夜この場そのものが、ようやく姿を取ったかのようだった。 「第十番、座継ぎのハル。わたしは、みなさんの話を受けて、この場をひとつにする役目です」 声はやわらかい。ハルは畳に手をつき、ゆっくりと頭を下げた。「第一番の灯が招き、第二番の霧が整え、第三番の手が直し、第四番の鏡が違いを映した。第五番が縁を守り、第六番が曖昧さを生み、第七番が距離を測り、第八番が抜けを見せ、第九番が余韻を残した。だからこそ、わたしは最後にそれらを座に戻す」 アカネが笑う。「ずいぶんきれいにまとめるじゃないか」 「まとめるのではありません。並べたまま、ひとつの景色にするのです」 ユズリが静かに目を細めた。「結び目の役か」 「ええ。ほどけないように、きつすぎもしないように。ここにいる全員は、似ていないからこそ一緒にいられる。火は霧を必要とし、霧は手を必要とし、鏡は縁を必要とする。抜けも、距離も、余韻も、全部が夜をやわらかくしているのです」 その言葉に、座敷のあちこちで小さなうなずきが起きた。トキワが照れくさそうに頭をかき、ササメは黙って肩の力を抜く。ユイは水面の奥へ沈むように目を伏せ、ミナトは誰かの表情を映すように微笑んだ。カズラは風呂敷を膝に置き、トオルは縁の位置を確かめるように指先をそろえる。シラベの霧が少しだけ薄れ、アカネの火は少しだけ明るくなる。 私はそこで、ようやく理解した。最初はばらばらに見えた三十体の妖怪たちは、順番に自己紹介していたのではない。互いの輪郭を少しずつ渡し合い、この場そのものを形づくっていたのだ。第十番のハルは、それを最後に見える形へと整えたにすぎない。 「これで終わりですか」私が問うと、ハルはふり向いて、どこか楽しげに笑った。 「終わりではありません。今夜は、あなたが持ち帰る番です」 その瞬間、座敷の奥で見えない襖がすっと開いた気がした。外からは、祭りの遠いざわめきに似た風がひと筋入り、灯りをやさしく揺らす。誰かが笑い、誰かが応じ、誰かが盃を置く音が重なる。 三十の名はまだここにある。けれどもう、数えるためではない。ただ、この夜を賑やかに照らすために。 私は立ち上がり、深く一礼した。帰り道は、もう怖くなかった。

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30体の妖怪が順に自己紹介をする小説。各妖怪は自分の番号(1から連番)、名前、特徴を紹介する。