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妖怪三十体自己紹介

小説ID: cmpl447rq000001p4f0s0cuc1

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第四番の名が呼ばれた瞬間、三番目までの静けさを割るように、床板がこつりと鳴った。立ち上がったのは、細身で、やけに姿勢のいい女だった。手には何も持っていない。だがその目だけが、さっきまでの会話を最初から聞いていたように、きらりと冴えている。 「第四番、返し鏡のミナト。ここまで聞いていて、ひとつだけ気づいたことがあるわ」 アカネが興味深そうに身を乗り出した。「おや、何に気づいたんだい」 ミナトはふっと笑った。「あたしは、誰かが話し終えるたびに、どう返すかで性分が出るの。だから名乗りも、ひとりで完結させるより、前の人を受けていた方がしっくりくる」 そう言って、彼女はカズラの方へ軽く顎を向けた。「三番の手は直すために待つと言ったでしょう。なら、あたしは待ったものに返事をする役目ね。受け取った言葉を、そのまま少しだけ形を変えて返すの」 「反射みたいだな」カズラが言う。 「ええ。でも、ただ映すだけじゃないわ。角度が少し違えば、同じ景色でも見え方は変わるもの」 シラベが静かにうなずいた。「霧もまた、見え方を変えますね」 「そう。だからあなたとは少し似ている。でも、わたしは曖昧にするより、輪郭を際立たせる方が好き」 その言葉に、座敷のあちこちから小さな笑いが漏れた。ミナトはそれを受けても動じず、今度はアカネへ視線を移す。 「第一番の火は、人を集める。第二番の霧は、集まった輪を落ち着かせる。第三番の手は、壊れたものを元に戻す。なら第四番のあたしは、その三つを見比べて、どこが似ていてどこが違うのかをはっきりさせる役よ」 「つまり、話の間をつなぐってわけかい」アカネがにやりとする。 「つなぐ、というより返すの。あなたが灯した火を、少しだけ別の角度で見せる。そうすると、次の人も入りやすいでしょう」 その瞬間、座敷の空気がほんの少し広がった気がした。三人の自己紹介でできた輪の外に、もうひとつ輪が重なる。ひとつの名が終わるたびに、次の名の居場所が自然に生まれていく。私はそれを見て、ようやくこの集まりの面白さに気づく。 ただ順番に名乗るだけではない。前の誰かを受けて、次の誰かへ渡していく。妖怪たちは、ばらばらなようでいて、互いの言葉を踏み台にしながら夜を組み上げているのだ。ミナトが袖を払って座に戻ると、次の名がすぐに呼ばれた。私はその流れの速さに少し息を呑み、それでも目を逸らせなかった。