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妖怪三十体自己紹介

小説ID: cmpl447rq000001p4f0s0cuc1

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第三番の名が呼ばれると、座敷の隅で小さな笑い声がした。立ち上がったのは、見た目だけならずいぶん無口そうな男である。髪は短く、肩幅は広い。だが手元には、なぜか色の剥げた風呂敷包みが抱えられていた。 「第三番、木戸のカズラ。見ての通り、力仕事が得意だ。だが本当に好きなのは、古い茶碗の欠けをなおしたり、壊れた下駄を履けるようにしたりすることだな」 意外な言葉に、場が少しだけ静まる。私は、そんな大きな手で細かな修繕をするのかと目を見張った。カズラは照れた様子もなく、風呂敷を解いて中身を見せる。そこには針や木札や、なめらかに削られた小さな木片がきちんと収められていた。 「脇役みたいだろう。だが、欠けたままでは座りが悪いものもある。だから俺は直す。人の心配事も、道具も、だいたいは似たようなものだ」 「ずいぶん器用なんだねえ」 アカネが感心したように言うと、カズラは肩をすくめた。 「器用というより、待つのが好きなだけさ。乾くのを待つ。馴染むのを待つ。そういう間が、案外いちばん面白い」 シラベが静かに目を細めた。 「あなたらしいですね。急がない手つきは、場を荒らさない」 「褒め言葉として受け取っておく」 カズラの返しに、今度は何人かが声を立てて笑った。見た目は無骨でも、言葉は妙にやわらかい。壊すより整える方へ向く気質は、アカネの灯りともシラベの霧とも違うのに、並ぶと不思議に落ち着く。火が強すぎれば熱くなり、霧が濃すぎれば迷う。だが、そのあいだを埋める手があれば、夜はちゃんと人のものになるのだ。 私は風呂敷の中身を見つめながら、妖怪にもこんなふうに、暮らしの細部を支える者がいるのかと感心した。奇妙さよりも親しみが先に立つ。三番目にして、もうこの座敷は、怖いより先に面白い場所になっていた。 カズラが包みをきゅっと結び直したところで、奥からまた次の名が呼ばれる。番号が進むたび、座敷の空気は少しずつ温度を変える。私はその流れに身を任せながら、次に現れる顔を待った。