第二番は、第一番の明るさとは少し違う。畳の端から、すっと細い影が立ち上がり、灯りを受けて輪郭だけが静かに浮いた。 「第二番、霧縁のシラベ。わたしは火を守るより、熱をやわらげる方が得意です」 声は低くはないのに、妙に遠くへ抜けていく。アカネがぱちんと指を鳴らすと、袖口の火はたしかに揺れたが、焦げる気配はない。シラベはそれを見て、ほんのわずかに口元を上げた。 「勢いは立派です。けれど、夜はいつも賑やかである必要もないでしょう」 「おや、冷やし役かい」 アカネが茶化すと、シラベは首を横に振った。 「冷やすのではありません。落ち着かせるのです。火は火、霧は霧。似ているようで、役目は違いますから」 その言い方が妙にきれいで、座敷の数体が小さくうなずいた。私は、同じ順番で名を告げるだけでも、こんなふうに印象が変わるのかと感心する。アカネの火が人を寄せる明かりなら、シラベの霧は人の輪郭をほどくような静けさを持っていた。 「第一番が道を照らすなら、第二番は足音を整えるってことか」 奥の方で誰かがからかうように言った。シラベはそちらへ目を向け、淡く笑う。 「ええ。急ぐ者には急ぐ者の役目があるのでしょう。ですが、足を止める者がいてこそ、次の一歩は選べるものです」 その返しは柔らかいのに、妙な芯があった。アカネが肩を揺らして笑う。 「なるほど、言い回しまで霧みたいだ。つかめそうでつかめない」 「それはあなたが火だからです」 「はは、うまいこと言うねえ」 私には、その短いやり取りだけで二人の違いが見えた。ひとりは寄せる光、ひとりは整える気配。同じ場にいても、同じ形にはならない。妖怪というのは、ただ奇妙な姿をしているだけではないのだと、ここに来て初めて実感する。 シラベが静かに一礼すると、座敷の奥から次の名を呼ぶ声がした。番号が一つ進むだけで、場の空気はまた別の色を帯びる。私はその変化を見逃すまいと、背筋を正した。
妖怪三十体自己紹介
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