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銀髪バイトのコンビニ日誌

小説ID: cmpovhgtc000001pq8hcypqzb

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駅前のコンビニの自動ドアが開くたび、銀色の髪が店内の蛍光灯を受けて、ひそかに視線を集めた。朝の通勤客が流れ去ったあと、俺は制服の袖を整え、初めての名札を胸につける。ここで働ければ、家賃の心配を少しは減らせる。そう思うと、緊張で乾いた喉の奥に、妙な覚悟が落ち着いていった。 「よろしくね。分からないことは、遠慮なくすぐ聞いて」 店長は四十代くらいの明るい男で、忙しさを見せない笑顔が不思議だった。レジの前に立つと、画面の文字がやけに多く見える。会計を押すつもりが返品のボタンに触れかけ、慌てて手を引っ込めた。店長は笑いながら「最初はみんなそんなもの」と言い、横から操作を教えてくれる。商品名を探すたびに指が迷い、レシートを渡す手もぎこちない。それでも一つひとつ確かめるたび、画面の流れが少しずつ頭に入っていった。 次は品出しだ。飲み物の棚に並ぶ缶やペットボトルは、見た目よりずっと重い。奥から手前へ押し込むように並べるのだと教わり、俺は何度も箱を持ち替えた。向きをそろえるだけの作業なのに、一本でも傾くと、棚全体が落ち着かなく見える。店長は「きれいに見えるだけで、お客さんは安心するんだ」と言う。その言葉が、ただの陳列を少し特別な仕事に変えた。 昼前には、近くの高校へ向かう学生が増えた。慌ただしい足音、温めた弁当を待つ人の沈黙、スープの湯気。俺は袋詰めをしながら、何度も「ありがとうございます」を繰り返す。声が小さすぎると注意され、大きすぎると自分で驚く。失敗のたびに頬が熱くなったが、店長は見逃さず、同僚もさりげなく助けてくれた。 午後、休憩室でペンを握り直したとき、初出勤の一日はまだ半分ほどしか終わっていないのだと知った。それでも、さっきまでただの客だった店の空気に、少しだけ自分の手触りが混じっている気がした。銀色の髪を気にする余裕は、もう少し減っていた。代わりに、次のレジを覚えたい、次の棚を整えたい、そんな小さな前向きさが胸の奥で静かに膨らみ始めていた。