閉店後の店は、昼間の喧噪が嘘みたいに静かだった。レジの表示だけが淡く光り、俺は売り場の奥で最後のゴミ袋を結ぶ。あれほど慌ただしかった日々が、今では不思議と懐かしい。棚を整える音、呼び込みの声、誰かのため息や笑い声。その全部が、この店の呼吸みたいに思えた。 「今日も助かったよ」 店長が伝票を片づけながら言う。佐伯さんは納品の箱を畳み、山田さんは明日の発注を確認している。誰も特別に気取らないのに、手際だけはもう息が合っていた。俺は返事をしようとして、ふとレジ前に視線をやる。そこには、いつの間にか見慣れた光景がある。銀色の髪の店員を目当てに来た学生、缶コーヒーを一つだけ買う会社員、俺の髪を見て笑ってから、何事もなかったように商品棚へ向かう常連たち。最初は視線が刺さるようで落ち着かなかったのに、今ではそれすら店の名物になっていた。 店長は俺の肩を軽く叩き、最初は心配したけどな、と笑う。だが心配だったのは、髪の色ではなく、俺がここに馴染めるかどうかだったのだろう。慣れない失敗を重ね、放送を噛み、品切れに焦り、客に助けられ、仲間に支えられてきた。そのたびに少しずつ、仕事はただ稼ぐための時間ではなくなった。ここで必要とされ、ここで誰かを助け、ここで笑い合う。そうして積み重なったものが、居場所という形になった。 バックヤードの時計が、次のシフトの準備を告げる。俺は新しい名札を胸に付け直し、売り場へ出た。自動ドアが開く音がして、夜の冷たい空気と一緒に、次の客が入ってくる。いらっしゃいませ、と声を出したとき、もう迷いはなかった。 銀色の髪は、ただ目立つだけの色じゃない。この店の明かりに映えて、人を呼び、会話を呼び、笑いを呼ぶ。そう思えるようになった自分が、少しだけ誇らしかった。俺はレジの前で姿勢を正し、慌ただしい日常へ、静かに一歩を踏み出した。
銀髪バイトのコンビニ日誌
小説ID: cmpovhgtc000001pq8hcypqzb
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銀色の髪の主人公がコンビニでバイトをするコメディ
