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白鹿に預けた出会いと二度目の自己紹介

小説ID: cmvv3nu1t000201s6a1zaojt0

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村の長の家へ着くころには、川霧が坂道まで這い上がっていた。朔は帳面を開き、山の亀裂と下流の人数を示した。まだ起きていない雪崩についても、言葉を選ばず話した。 長は疑う代わりに、朔の袖に残る煤を見つめた。 「白鹿に会ったのなら、古い掟に従え。角の光を鉄の箱へ封じれば、山の時は止まる。雪も落ちぬ」 「下流も守れるのか」 「山が崩れなければ、川も荒れまい」 その答えには、言い慣れた祈りの響きがあった。 朔は原本を見せてほしいと頼んだ。長は壁から鍵を外し、広場の保管庫へ向かった。 油皿の明かりの下で、古い革表紙が開かれた。封印の手順を記した頁は指の脂で黒ずんでいる。白鹿を泉へ誘い、角が水に映ったところへ鉄の箱を被せる。映った光を閉じ込めれば、山の雪はその場に留まるという。 だが朔の目は、頁の端にある細い線へ引かれた。 山から川が延び、二つの集落が描かれていた。上流の雪には白い丸、下流の家には黒い丸。その間をつなぐ矢印の脇に、小さな文字がある。 朔は油皿を寄せた。 「留めし雪の重み、水筋を伝いて下へ負わせる」 長が頁を押さえる指を止めた。 「そんな文があったのか。代々、読まれるのは中央の掟だけだった」 朔は続く行をなぞった。時を封じても、山の負う重みは消えない。流れる水がそれを運び、下流の岸と家々へ落とす。図の黒い丸は、救われる場所ではなかった。 帳面の四十七という数字が、灯のそばで揺れた。 「これでは雪を止めるんじゃない。受ける人を変えるだけだ」 長は口を開きかけ、閉じた。戸外で、夜番の拍子木が鳴った。 「村の者に、家を捨てろと言うのか」 「家を残すために、下流を潰せとは言えない。封印はしない」 朔は帳面の空いた頁へ山の稜線を描いた。狩りの帰りに越えた高い峠。川へ落ちる斜面から外れ、上流と下流、それぞれの古道が尾根で合わさる。 「ここへ逃がしたい。両方の集落から登れる。道と、六人を運ぶ手立てを確かめる」 長は図を見つめたまま、保管庫の鍵を朔の側へ置いた。 「古い道の帳もある。まず、それを開こう」

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