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白鹿に預けた出会いと二度目の自己紹介

小説ID: cmvv3nu1t000201s6a1zaojt0

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炭筆を削り直すと、朔は上下流へ使いを出した。それぞれの古道を登り、夕刻までに山小屋へ来てほしい。備蓄を書き出したものと、家ごとの名簿を持つよう頼んだ。 炉に火が入るころ、二つの集落の代表が向かい合った。下流の粉問屋は外套も脱がず、上流の長が置いた帳面を見た。 「冬の蓄えまで山へ上げて、あとで返してもらえるのか」 「こちらにも食べさせる者がいる。そちらの四十七人を引き受ければ、春まで持たん」 朔は二人の間へ道図を広げた。 「どちらかが養う話じゃない。両方が家を離れる。その間に必要な分を数えたい」 粉問屋は唇を結び、ようやく懐から紙を出した。粉と豆、油の量が並んでいた。長も干し肉と雑穀の蔵帳を開く。冬いっぱいの備蓄を取り上げるのではなく、まず避難中の一人一日分を決め、人数と日数を掛けた。足りない油は下流から、湯を沸かす薪は上流から出せた。 「運べる重さもある。全部持とうとすれば、人が残る」 朔の言葉に、粉問屋が紙の余白へ運び手の数を書いた。 上流は三十四人。下流は四十七人。そのうち一人で歩けない六人には、担ぎ手と交代の者を割り当てた。幼い子は家族と先に登らせ、山小屋で湯を用意する者を先行させる。残る者は食糧を小分けにし、最後の便で荷を運ぶ。各組の先頭と最後尾にも名前を置いた。 「下流からは、身軽でも二刻。担架なら三刻は見たい」 「上流の組は合流点で待たず、先に小屋へ入れる。狭道を空けよう」 互いの道を知らない者同士が、紙の上で出発時刻をずらし始めた。炉の薪が崩れるころには、誰が誰を迎えに行くかまで決まっていた。 朔は下流の名簿へ手を伸ばした。伴侶はどこにいるのか。その問いが喉まで上がったが、先に目に留まったのは、家の名だけで閉じられた一行だった。 「水車小屋の老人は、この家に含まれているか」 粉問屋が首を振り、炭筆を受け取った。冬だけ身を寄せる老人の名が加わり、下流の人数は四十八になった。 朔は伴侶を尋ねる言葉を飲み込み、ほかにも抜けがないか、一軒ずつ読み上げた。 この支度も、さらに遡れば消えてしまう。帳面に役割と時刻を書き写しながら、朔は自分が最初に確かめようとしたものの変化を思った。あの人へ続く道だけでなく、誰も取り残さない道を、今は探していた。

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