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父の謝罪は注文よりぎこちない

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父の謝罪は注文よりぎこちない
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私は札の裏を伏せたまま、父の手が離れるのを待った。今ここで続きを読むのは、提出前の作文を勝手に採点するような気がした。 やがて照明が戻り、職員が設備の安全を確認した。母が鍋を温め直す横で、妹は札を並べた。 「これ、屋台の引き出しに残ってたやつ。端に番号があるから、順番に呼ぼう」 裏は見えないよう、番号を残して折っていく。私も黙って手伝った。父は何も言わず、お玉を持った。 「十二番の方、お待たせしました」 私が呼ぶのと同時に、父が別の器を差し出した。 「そこの青い上着。ねぎ抜きだろ」 「その方は十五番。今は十二番」 「顔を見りゃ分かる」 「番号なら私にも分かる」 二つの器の間で、青い上着の男性が遠慮がちに手を上げた。 「こちらは出席番号制ですか、常連制ですか」 列から笑いが漏れた。 「ただいま制度を統一しております」 私が答えると、妹がうなずいた。 「先生と店主の合同会議、長引きがちです」 結局、私は列の案内と札の確認、父は盛り付けに専念することになった。父の記憶力と私の出席簿方式は、離して置けばどちらも役に立つらしい。 ねぎ抜きの札を持つ女性には、職員と一緒に、好みなのか食物アレルギーなのかを確かめた。アレルギーだと聞くと、職員が材料と調味料の表示を確認する。 「同じ鍋だから、ねぎだけ取っても駄目だな」 父も手を止めた。安全を確かめられない汁物は渡さず、職員が備蓄から、表示を本人と確認できる食品を探した。 列が進むと、父が私の袖を引いた。 「杖の人、器を持って歩くのは難しいぞ。席を聞いて運んでやれ」 次には、幼い子を連れた人の器を少し待たせた。 「熱い。急がせるな」 番号も注文も合っている。それで十分だと思っていた私の目から、こぼれていたことだった。 父は家では、頼んでも椅子を一つ動かさない人だった。その父が、誰かの空いた片手や、届かない高さにはすぐ気づく。 席へ汁物を届けて戻ると、父は折られた札を指先でそろえていた。 「次は何番だ」 「十六番」 今度は、ちゃんと待ってくれた。 私はその小さな変化を受け取りながら、札の裏の言葉にも、まだ順番が来ていないだけなのかもしれないと思った。

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