配膳が一段落すると、職員が隣の控室を使わせてくれた。私たちは空の盆と注文札を持って移った。家族四人が座ると、会議には少なく、逃げ道を探すには多い人数だった。 母は札を机に置いた。 「屋台を続けるのが大変だったことは、知ってる。私も一緒にやってたんだから」 父が顔を上げた。 「でも、閉めるって決めたあとで聞かされたのは、つらかった。手伝うときだけ二人で、決めるときは一人なんだなって」 父の唇が動いた。母は待った。けれど父は、言いかけた言葉を飲み込んだ。 妹が盆の縁を指でなぞった。 「約束を忘れたことも嫌だったけど、聞いても黙られるのが、もっと嫌だった」 窓の向こうで雨どいが鳴った。 「心配させたくなかったのかもしれない。でも黙られると、怒ってるのかな、具合が悪いのかなって、こっちが全部考えることになるんだよ。私、お父さんの無言の通訳、資格持ってないし」 母が小さくうなずいた。 「勤続年数が長くても、分からないわよ」 父は膝の上の手をほどいた。いつもの「うるさい」は出てこなかった。 私は二人の言葉が途切れたところで、背筋を伸ばした。 「つまり、今後は何かを決める前に家族で情報を共有して」 「今日は職員会議じゃないよ」 母の一言で、議長席が消えた。 「あなたの話を聞きたいの。議事録じゃなくて」 妹までこちらを見る。私は盆を持ち直した。運ぶものはもう何もないのに、まだ係の顔をしていた。 「教師になるって言ったとき、向いてないって決めつけられたのが、ずっと嫌だった」 声にすると、昔の傷は思ったより近くにあった。 「仕事を始めてからも、ちゃんとしてなきゃって疲れてた。家に来てまで正しい説明をして、反対されて、それでも落ち着いて返事をするのは、しんどかった」 父の顔を見る。 「忙しいのも本当だったけど、それだけじゃない。ここなら先生を休める、とは思えなかったんだ」 言い終えて、膝の上の盆を机に置いた。 父は長く黙った。今度の沈黙には、こちらの言葉を押し返す感じがなかった。 「そんなふうに帰ってきてたのか」 私はうなずいた。 誰も、分かったなら解決だとは言わなかった。父も席を立たず、札から目を上げて、私の次の言葉を待っていた。
父の謝罪は注文よりぎこちない
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