深夜の公民館では、広間の話し声が少しずつ寝息に変わっていた。私たちも声を落とし、残った食材の量や開封した時刻を職員に伝えた。保管を引き継いでもらうと、調理台にようやく何もない場所ができた。 「広いね。さっきまで玉ねぎの領土だったのに」 妹が台を拭き、父が隅に残った皮を拾う。母は借りた道具を確かめながら、椅子で広げた相談の紙を持ってきた。 「営業は、修繕と必要な手続きが済んでから。許可をもらえた地域の催しで、月に一回。それでどう?」 私が尋ねると、父は指で紙を押さえた。 「直しただけで客を呼ぶわけにはいかんな」 「うん。開催する人にも、関係する窓口にも確認する。日程は四人の予定を聞いて調整するよ」 「欠席届は?」 妹が聞いた。 「いらない。来られない日は、来られないでいい」 父がうなずくのを見てから、私は日程調整の横に自分の名前を書いた。 母は仕入れを引き受けた。 「ただし、予算と数は先に相談。安かったから百人分、はやめましょう」 「昔も百人分は買ってない」 「八十人分の話、今する?」 父は蛇口の水量を調節した。水音で過去を流すには、少し勢いが足りなかった。 「私は会計。売り上げと出費を記録する。お父さんの『たぶん黒字』は数字に数えません」 妹が紙を引き寄せ、四人の名前をそろえて書いた。父の担当は調理。献立も費用も、先にみんなに見せることになった。 「先生の採点より厳しいな」 「赤字は赤ペンじゃ直らないからね」 私が答えると、父は困ったように笑った。 担当表を眺めていた父が、紙の上を指で探った。 「店主の欄がないぞ」 妹のペンが止まる。私も、また決める人と手伝う人に分かれるのかと、布巾を握り直した。 母は父の横に立ち、まだ洗っていない大鍋を見た。 「今度は四人とも相談役で、四人とも洗い物係」 誰も異議を唱えなかった。全員が黙って流しに向かう。 父が鍋を押さえ、母が洗い、妹がすすいだ道具を私に渡した。 拭き上げたお玉を棚へ戻すと、父が小声で聞いた。 「これなら、俺が休む日も決められるか」 「決められるよ」 私が答えると、父は鍋を少し持ち上げた。 四人で洗うには流しは狭かったが、誰か一人を残して帰るよりは、ずっとましだった。
父の謝罪は注文よりぎこちない
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