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父の謝罪は注文よりぎこちない

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父の謝罪は注文よりぎこちない
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調理室へ戻ると、父は盆を置き、窓の向こうを見た。 「屋台がなくなったら、お前らに話しかける口実もなくなると思った」 布巾を絞る母の手が止まった。 「看板を直すとか、道具を探すとかなら、呼べる。何もなくなってから、話があると言っても……何から言えばいいか分からん」 それで椅子から動けなかったのか。私は父の隣に、洗った盆を立てた。 「屋台を残すことと、あそこに座り続けることは、分けよう。父さんが雨に漬かっても、木材の寿命は延びないよ」 「だしも出ないしね」 妹が足し、父は鼻から短く息を漏らした。 片づけの確認に来た職員に、明朝の撤去について尋ねた。 「敷地の安全を確保するためです。作業前に調整できれば、所有者の方が搬出することも可能ですよ」 処分しかないと思い込んでいたらしい父が、顔を上げた。 母は手を拭き、携帯を出した。 「前に相談した倉庫、空きがあるか連絡してみる。今夜はもう遅いから、返事は朝かもしれないけど」 「そんな相談をしてたのか」 「してたの。あなたにも話したけど、返事がなかった」 父は口を開き、閉じた。 「聞いてなかった。明日は俺も話す」 鍋の汚れを落としながら、妹が言った。 「直せたら、月に一回だけ開くのはどう? 毎日じゃなくて、みんなが来られる日に」 「営業場所の許可とか、衛生管理とか、確認が要るね」 私が答えると、妹が肩をすくめた。 「先生、遠足のしおりを作る顔になってる」 「今のは必要な心配」 「車輪も屋根も直さなきゃならん。金がかかるぞ」 父の言葉に、母がうなずいた。 「まず見積もり。家計から黙って出すのはなしね」 「私たちの手伝いも、出席扱いにしないで。予定は聞いて」 私が続けると、父は今度はすぐにうなずいた。 母は倉庫への問い合わせを送り、私は職員と搬出の連絡先を確認した。妹は紙に修繕、場所、費用と書き、父の前に置いた。注文札ではない、まっさらな紙だった。 「全部決めるまで帰れない会議?」 妹が聞く。 「全部じゃない。全員がどう思ってるか、聞くまで」 私が言うと、父は紙を引き寄せた。 「俺は、残したい。ただ、また母さん任せにはしない」 母は布巾を畳んでから椅子に座った。 「じゃあ、私ができるところも話すわ」 父は立たなかった。空になった鍋の隣で、四人ぶんの相談が続いた。

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