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彗星よりも神童扱いが恐ろしい

小説ID: cmw53skf1000201plrgzm1wc9

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また同じ朝を迎えた仁は、新聞の写しを抱えて町の集まりへ出向いた。理科教師も来て、彗星の尾について説明する図を座敷に広げてくれた。 「成分が見つかったことと、地上の空気が危なくなることは別です」 だが、膝を寄せた人々の顔は曇ったままだった。 「新聞より、お前さんのほうが物知りだと言うのか」 仁は言葉に詰まった。そのとき、朝に浮かんだ光景が胸をよぎった。 「もうすぐ郵便配達が来ます。門の前で二度、咳をします」 庭先で咳が二つ続いた。紺の服の配達人が現れ、世話役へ封書を差し出す。座敷の囁きが止まった。 「それから、門口で拾った煙草入れは魚屋さんのです」 世話役が懐から小さな袋を出した。ほどなく魚屋の主人が駆け込んできて、それを見るなり頭を下げた。 「助かった! 女房に縫ってもらった物でね」 皆の目が仁へ戻った。今度は誰も、話を遮ろうとしない。 胸を撫で下ろし、仁は新聞の写しを持ち直した。 「では、記事のどこまでが確かめられた話なのかを――」 「うちの息子の縁談は、まとまるかね」 隅にいた女が身を乗り出した。 「明日の米の値はどうなる」 「毒気が来るなら、どの家へ逃げればいい」 質問が次々に飛んだ。仁が答える前から、隣同士で相談が始まる。少年に聞けば、もう新聞も望遠鏡も要らないという顔だった。 「仁君が話したいのは、占いではありません」 教師が静かに言った。しかし世話役は、広げてあった図を端へ寄せ、仁の前に座布団を重ねた。 「まあ先生、まずはこの子の話を」 拍手が起きた。高くなった座布団の上で、仁は少しも偉くなった気がしなかった。 話を聞いてもらうために、先を知る力を見せた。それなのに、自分の言葉を確かめてもらう道を、自分で塞いでしまったのだ。 毒気の噂を追い払うはずが、別の思い込みを座敷いっぱいに招いていた。 「わからないことは、わかりません」 仁はそう言って頭を下げ、教師と相談して集まりを切り上げた。 部室へ戻ると、机の星図に浮かぶ文字が、昨日より短くなっていた。 『返却は次の鐘まで』 窓の外では、町の人がまだ仁の噂をしている。 仁は風呂敷を引き寄せた。どれほど拍手をもらっても、あの街との約束まで延ばせるわけではなかった。

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